脳梗塞の再発データ
脳梗塞は再発しやすい疾病だと知られていますが、タイプによってその再発率には違いがあります。最も再発しやすいのが「心原生塞栓症」、その次が「アテローム血栓性脳梗塞」、最後が「ラクナ梗塞」です。これはそれぞれの特徴・発症の原因が違うためですが、とくに心原生塞栓症は心房細動という不整脈の一種が発症の主な原因となっていて、この疾病を治療しない限りは常に再発のリスクに晒されているともいえます。
また再発のタイミングは「急性期」といわれる発症直後から2週間のあいだが最も高いと言われており、そのため発症直後こそ最も用心しなければいけません。
脳梗塞の再発を防がなければいけない理由
脳梗塞に限らず脳卒中(脳出血、くも膜下出血)を一度発症すると、何かしらの後遺症が出る可能性があります。そしてそれが再発すると後遺症が出る確率はずっと高まってしまうのです。また初回の発症が脳の右側で、再発がその逆の左側だと四肢の左右に障害出るおそれがあります。そうすると日常生活はおろか嚥下や呼吸にも不自由するようになり、最悪の場合は命に危険につながってしまいます。
そのため脳梗塞は一度発症したのなら、次はいかにして再発を防ぐかを考えなくてはいけないのです。
再発予防に必要な薬
血栓性脳梗塞の概要と作用
アテローム血栓性脳梗塞は3つある脳梗塞の種類の中で中くらいの太さの血管にできる血栓が原因となって発症するタイプです。その症状・後遺症は心原生塞栓症に比べると軽くなる傾向にありますがラクナ梗塞に比べると重症化するおそれがあります。血液がドロドロの状態(アテローム硬化)になることが直接の原因で、従来は脂質を多く摂取していた欧米人に多いタイプの脳梗塞だと言われていましたが、生活習慣の変化を受けてここ最近では日本人にも多く見られるようになってきています。
抗血小板薬の概要と作用
ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の発症の原因となる血栓は血液中の血小板が固まったものであることがほとんどです。そのため血小板のはたらきを抑える抗血小板薬を用いることで、再発を予防することができます。とくに急性期に服用することで大きな効果が期待できます。
しかし抗血小板薬は血液の流れを促進することで脳出血のリスクを高めるという側面もあるため、その使用については医師とよく相談するようにしましょう。」
抗凝固療法の概要と作用
抗凝固療法では抗凝固薬を用いますが、心原生塞栓症にとくに有効です。これは心原生塞栓症の主な原因となる心臓の血栓が、血小板ではなく「血液凝固たんぱく(フィブリン)」が主体となるためです。そのため再発を防止するために血小板ではなく血液凝固たんぱくにアプローチできる抗凝固薬を用います。
薬物療法における注意点
脳梗塞を一度発症し、その再発を防ぐために薬物療法を始めたなら基本的にはその薬を一生飲み続ける必要があります。血圧を下げる薬のように数値でその効果を確かめることが難しいため、しばらくすると「もうそろそろ良くなっただろう」と自己判断して薬を飲むのをストップさせてしまう人がいます。しかし医師・スタッフが薬を飲むように指示しているなら患者の判断で中止させてはいけません。指示された用法・用量にはたしかな根拠があり、それをストップさせることで再発のリスクを高めてしまいます。
実際に脳梗塞を再発する人の中には薬を飲むのを自己判断でやめてしまった、という人が一定数いるのです。
体に良い生活スタイル
脳梗塞の再発を防ぐためには薬物療法など医師に手によるもの以外にも、患者自身が日々の生活の中で実践できること・注意すべきことがあります。脳梗塞を発症する原因となる動脈硬化や血栓は、食事や嗜好品など生活習慣によってできやすくなってしまうので、それらを知ることで効果的に予防していきましょう。
食事
塩分の多い食事を続けていると、動脈硬化を引き起こす高血圧になりやすくなるといわれています。そのため普段から塩分の少ない料理・メニューを選ぶようにしましょう。脂質を多く含む食事も要注意です。コレステロール過多・脂質異常症は血液をドロドロにして、やはり動脈硬化を引き起こしやすくなります。同じ食材であっても揚げ物や炒め物よりは焼き料理や蒸し料理を選ぶと脂肪分をカットすることができます。
炭水化物・タンパク質・ミネラルとバランスの良い栄養素を取るように心がけましょう。いつもの食事にサラダや小鉢など一品加えるのも効果的です。また食事の際には早食いをせずによく咀嚼し、一緒に水分(水やお茶)もしっかりと摂取するようにしましょう。
アルコール
アルコールの過剰摂取は高血圧を引き起こすといわれています。またお酒を飲む場には塩分の多いおつまみがつきもので、知らず知らずのうちにアルコールだけではなくカロリーや塩分も多めに摂取してしまいがちです。
日常的にアルコールを摂取する習慣がある人は飲酒自体の回数や飲む量をコントロールするように心がけましょう。
禁煙
煙草に含まれるニコチンには血圧を上げる効果があり、高血圧を発症するリスクを高めてしまいます。実際に喫煙者が脳梗塞を発症する割合は非喫煙者に比べると3倍ほど高くなるというデータがあります。
ここにおいて注意しなければいけないのは喫煙の量自体はあまり関係ないということです。一日に数箱吸うヘビースモーカーも数本しか吸わない人でも非喫煙者と比べた場合の発症リスクにさほど差はありません。例え一日一本でも煙草を吸う習慣がある人はそれだけで脳梗塞を発症するリスクを高めてしまうのです。そのためそのリスクを排除したければ今よりも本数を減らすのではなく、完全に禁煙する必要があります。
運動
体重をコントロールすることは脳梗塞の再発を防ぐうえで非常に重要となります。そして体重をコントロールする方法としては食事以外に運動習慣があり、身体を動かすことで健康的にカロリーを消費することができます。しかし運動はそれ以外にも心身の健康にとって大きなプラス要素をもたらすのです。
運動で筋肉や関節を動かすことでそれらが強化され、健康な肉体づくりをすることができます。とくに高齢者になってからはそれまでの運動習慣の有無で大きく差が出ると言われているので、まだ若いうちから身体を動かす習慣を身につけることは未来への投資ともなります。
また身体を動かして汗を流すことはストレス発散につながります。ストレス発散の方法は人によってそれぞれでしょうが、中には飲酒や喫煙でストレスを紛らわそうという人もいます。運動はそれよりもずっと健康的で、様々な面で脳梗塞の再発を防止するのに効果的です。
しかし一度目の脳梗塞の発症で何かしらの後遺症が残ってしまった人もいるでしょう。手足の自由が効かなくなってしまった人もいるかもしれません。またそれまで運動習慣のなかった高齢の方がいきなり負荷のかかる運動を始めるとかえって健康を害するおそれがあります。どのような運動がいいのか、どのくらいの強度がいいのかは医師やスタッフと相談し、無理なく続けられる範囲で健康を維持していきましょう。