脳梗塞の後遺症の種類
脳梗塞は状態や症状によっては後遺症が生じることで知られています。どのような後遺症が出るかはダメージを受けた部位によって異なりますが、いずれも日常生活を送るうえで大きな障害となり得るものです。
運動障害
運動を司る脳内の部位がダメージを負うことで、日常生活の中で手足を自由に動かすことが難しくなることがあります。半身麻痺や片麻痺が生じ、手足をうまくコントロールができなくなります。それによって歩行する、階段を上る、ペンや箸を持つなどの様々な日常的な行為に支障を来たします。
またダメージを受けた脳の部位によっては舌や喉の筋肉に影響が残ることがあります。そうなるとろれつが回らなくなって発声がしづらくなったり、周囲とコミュニケーションを取りづらくなったりします。物を飲み込む「嚥下」ができなくなると健康や生命の維持にも関わってくるため、無視できない症状だということができます。
感覚障害
感覚を司る神経は手足を動かす運動神経ともリンクしていて、運動障害によって片麻痺が起こると多くの場合は身体の同じ側に感覚障害も生じます。物に触れても感覚がなくなる、温かい冷たいなどの温度がわからない、手足が痺れる、など感覚が鈍感になります。
構音障害、失語症
喉や舌の筋肉に影響を及ぼす部分にダメージを受けると舌がもつれて発音に支障を来たすようになります。それ以外にも言語を司る部分にダメージを受けると、言葉や文字自体が理解できなくなるという症状が起こります。伝えたいことがあるものの言葉をうまく選べない、文字として書けない、もしくは相手の話している言葉はわかるけれどその内容が理解できないという症状です。そのため周囲との意思の疎通が困難になります。
高次脳機能障害
脳梗塞(脳卒中)によって大脳がダメージを受けると「高次脳機能障害」という脳の機能が失われてしまう状態に陥ることがあります。それによって「新しいことを覚えられない」「集中した思考ができない」、「間違いに気づくことができない」など、日常生活に大きな支障を来たす症状に悩まされることになります。
意識障害
脳梗塞により広範囲にわたって大脳や脳幹がダメージを受けると「意識障害」が起こることがあります。この状態になった人は集中力が続かなくなったり、ぼんやりとしてよく眠るようになったり、会話や思考が正常でなくなったりします。重症な場合は昏睡状態になって意識がなくなりますが、このときに併せて呼吸や免疫も弱まると死の危険性も出てくるため注意が必要です。
脳性麻痺
脳梗塞によって大脳の運動野や錐体路の神経線維という部位が深刻なダメージを負うこともあります。そうなると麻痺が出ることがありますが、ダメージを受けたのが大脳の左側なら手足においては右側に麻痺が出ます。その反対に右側にダメージを受けた場合に麻痺が出るのは左側です。これは大脳から伸びる運動神経が首の部分で交差しているためです。
運動神経のそばには感覚神経も通っていて、運動神経が傷ついた場合は感覚神経も何らかの傷を負っていることがほとんどです。そのため麻痺が出たなら感覚鈍麻など感覚神経のトラブルも引き起こってしまいます。
感覚神経の障害が出ると身体全体のバランスが崩れ、後遺症も重いものになりがちです。
再発予防のためのアプローチ
脳梗塞は再発しやすく、あるデータによると発症から10年で50%――半数の人が再発してしまっています。脳梗塞がここまで再発しやすいのには理由があり、それは元々から脳梗塞を発症しやすい体質・生活をしている人が一度発症したあともその状態を改善させずにいるからです。これはむし歯と似ていて、ブラッシングの仕方が充分でない人は歯科医院でむし歯を治療してもまたむし歯をつくってしまいます。この場合はむし歯を治療するのと同時にブラッシングの仕方を指導しなければ根本原因の改善にはなりません。脳梗塞も同じで、元々の体質や生活習慣に問題があるならそれを改善することで再発を防ぐことができるのです。しかも脳梗塞は再発するたびに後遺症が新たに加わる、悪化することもあると言われているため、再発を防ぐことは本人の健康はもちろん生命を守るために何より重要となります。
以下のことを実践・注意することは脳梗塞の再発を防ぐうえで有効だと言われています。
脳梗塞の原因となった病気の治療
脳梗塞のリスク・ファクターとして挙げられるのが高血圧、脂質異常症、糖尿病などの病気です。これらの持病を抱えている人は脳梗塞の発症の可能性が高まるため、医師と相談しながら治療することで再発防止に大きな効果を期待できます。
高血圧
血圧が高くなり、血液の流れのバランスが崩れてしまうのが高血圧です。それによって動脈硬化になりやすくなったり、血栓ができやすくなることで脳梗塞を発症しやすくなるのです。そのため血圧を常に正常な範囲に収めることは脳梗塞の発症と再発の予防においてとても重要です。血圧は一般的に「上が〇〇、下が○○」と表現されますが、脳梗塞を予防するためには上が140mmhg未満、下が90mmhg未満がその数値目標となります。
適度な運動や塩分を控えめにした食事を普段から心がけることで血圧は下げることができます。
脂質異常症
血液中のコレステロール濃度が高くなると血液自体がドロドロになり、血流が滞って血管が詰まりやすくなります。脂質異常症は中性脂肪やコレステロールが高い状態のことで、動脈硬化になりやすくなることから脳梗塞を発症するリスクを高めてしまいます。
高血圧と同じで適度な運動や塩分を控えめにした食事を普段から心がけることで改善が期待できます。
糖尿病
糖尿病になると血液中の糖分濃度が高くなり、脂質異常症と同じように血液がドロドロになって血管が詰まりやすくなります。適度な運動や糖尿病患者のために考えられた食事療法で血糖値はある程度コントロールできますが、それでも正常値に収まらないときには薬物療法が必要となります。この薬物療法には内服薬とインスリン注射という2つの方法があります。
生活習慣の改善
生活習慣を改善することでも脳梗塞の再発を防ぐことができます。
栄養バランスの良い食事
栄養バランスの考えられた食事を取ることで血圧やコレステロールを正常値に戻すことができます。脂っこいものはなるくべ避け、魚や野菜を多く摂取するようにしましょう。
水分をこまめに摂取する
水分不足は血液の濃度を高める要因となり、それによって動脈硬化を引き起こすことがあります。こまめに水分を取る習慣を身につけましょう。このとき摂取するのは水やお茶など糖分を含んだジュースや清涼飲料水をたくさん飲むと健康にとってかえってマイナスな効果をもたらします。
禁煙
煙草に含まれるニコチンは血液をドロドロにし、動脈硬化を促進させるはたらきがあります。事実、喫煙習慣がある人は非喫煙者よりも脳梗塞を発症するリスクが3倍前後高くなるといわれています。
充分な睡眠
睡眠不足は血圧を高め、脳梗塞発症のリスクを増加させる要因となります。早寝早起きの生活を心がけるようにしましょう。