脳出血とは血管が破れる病気
「脳卒中」とは脳内の血管がトラブルに見舞われ、それによって身体に様々な症状・障害が出る疾病の総称のことです。脳出血はその脳卒中の1つのタイプですが、言葉のイメージ通りに脳内の血管が破れてそこから出血することで発症します。血管が破れて出血すると、血液の塊が脳細胞を圧迫し、それによって手足の麻痺、激しい頭痛、失語症などの言葉の障害、昏睡状態に陥る、といった症状が発生するのです。症状が軽微ならじきに治まることもありますが、後遺症が出ることもあれば死の危険性もある事態を招くこともあるため、充分に注意する必要のある疾病です。
脳出血は前兆がない場合がある
脳卒中の1種類である「脳梗塞」は血管が動脈硬化を起こしたり、血栓ができたりすることで発症しますが、本格的な症状が出る前に頭痛、手足の麻痺、倦怠感というような前兆と見られるまだ軽い症状が出やすいことが特徴です。脳出血でも軽微なものなら同じように前兆が出ますが、脳出血の一番怖いところはそういった前兆が出ずに一気に重症化する割合が高いということです。
この特徴は脳出血が発症するメカニズムが関係しています。脳出血はダメージを受けた血管が破れることでそこから出血し、血液の塊が脳細胞を圧迫することで発症します。ここにおいて血管が破れること自体がすでに深刻な状態だということができ、そのため一気に重症化することが多くなってしまうのです。
発症すると脳梗塞と同じような症状が発症する
脳卒中は脳梗塞と似たような症状が出ることで知られています。
具体的には以下のような症状が出ます。
片方の目が見えなくなる
視界の片側が欠損します。
めまい・ふらつき
めまいやふらつきに襲われ、ひどいときにはその場に座り込んでしまいます。
身体の片側のまひ
手足の痺れや麻痺が出ます。
うまく話せない
舌の筋肉が思うように動かず、言いたい言葉を声に出すことができません。
このように表に出た症状だけでは脳出血なのか脳梗塞なのかすぐに判断できない場合があります。発症した種類によって治療も変わってくるためすぐに医師の診断を受けるようにしてください。
高血圧が最大の危険因子
脳出血を引き起こす最大の危険因子はずばり「高血圧」です。高血圧の状態を長年そのままにしていると脳の血管に過度な負担がかかり、やがて血管壊死という状態になり、脆くなった血管が最後には破れてしまうのです。そして破れた箇所から出血して脳内に血液が溢れてしまいます。
また高血圧は血管を傷つけることで動脈硬化にもつながるため、脳出血だけではなく脳梗塞やくも膜下出血という脳卒中全般の原因となり得るため注意しなければいけません。
脳出血の予防のために
脳出血を引き起こす最大の危険因子は「高血圧」だと先ほど紹介しました。すでに血圧が高いという診断を受けている方は降圧剤などの血圧を下げる薬を服用するのが効果的ですがその他にも患者が日々の生活の中で自ら行える・心がけることができることがあります。それは「生活習慣を見直す」ことです。高血圧のほとんどは日々の生活によってもたらされる結果であり、そのためそれを見直すことで改善させることができます。どのような生活習慣が高血圧につながるのか、またそれをどうすることで改善できるのかを知り、意識的に血圧を下げていきましょう。
適度な運動習慣
脳出血を発症する人の大半は定期的な運動習慣を持っていないことで知られています。運動をすることでカロリーを消費することができ、体重をコントロールできるようになるの
です。また運動は筋肉や関節を使うことになり、肉体の健康維持につながります。
どのような運動をするべきかは患者の状態ごとに異なります。激しい運動を急に始めるとかえって筋肉を傷めることもあるので、その人のペースにあったものを選ぶようにしましょう。例えばそれまで長いあいだ運動をしていなかった人なら、ランニングよりもまずはウォーキングの方が良いでしょう。プールで身体を動かすならいきなり泳ぐよりも、やはり水中でのウォーキングの方が全身とくに心臓への負担は少なくて済みます。そして身体が慣れていったら運動強度を少しずつ上げていけばいいのです。
食生活
塩分が多い食事を続けていると血液の濃度が上がり、高血圧へとつながります。そのため食事の塩分をコントロールすることで血圧を正常値に収め、結果的に脳出血の予防を期待できます。また野菜には様々なミネラルが含まれていて、中には血液をサラサラにする効果を持つものもあるため、野菜を意識的に摂取することも有効です。
健康意識の高まりを受けて今では市販品の多くに栄養成分が表示されているため、塩分の数値をコントロールすることは昔に比べて容易になったといえます。すでに高血圧あるいはそれに近い数値になっているという人は医師から一日に摂取して良い塩分の上限が指示されているはずです。成分表示を見ながら適切に選んでいきましょう。
また今では「減塩」と名のついた商品が数多くあります。醤油や味噌などの調味料にも普及しているので、そういう商品を活用しながら賢く塩分をカットしていきましょう。
過度の疲労やストレス
「過労死」は日本社会に特有の現象だと言われていますが、その具体的な死因としては心臓系の疾患と脳卒中が上位に挙げられます。過度な疲労やストレスは心身に大きな負担をかけ、血圧を上げることが知られています。またあまりの忙しさから睡眠時間が不足することも血圧が上がることにつながります。
過度なアルコールの摂取
「酒は百薬の長」という言葉がありますが、たしかにアルコールは適量なら健康上プラスの効果をもたらすこともあります。しかし過度なアルコールの摂取・飲酒は健康を害することも知られているはずです。例えば命の危険にもつながる肝硬変はアルコールを主な原因として発症しますし、消化器にダメージを与えることもあります。
そしてアルコールの過剰摂取によって血圧も上げることが知られています。アルコール自体が動脈硬化を引き起こす働きがありますし、いわゆる「お酒の場」では塩分を多く含むおつまみを同時に摂取しがちです。またアルコールと煙草(後述)がセットになっている人も一定数います。
禁煙
煙草は脳卒中にとっては「百害あって一利なし」だということができます。煙草に含まれるニコチンは血液をドロドロにして血圧を上げる効果があり、実際に喫煙者が脳出血を発症する割合は非喫煙者よりも多いというデータがあります。それなら喫煙習慣のある方は「脳出血を予防するために今より本数を減らせばいい」というわけではありません。実は喫煙の本数はあまり関係がなく、一日にひと箱吸っている人も数本吸っている人も脳出血発症のリスクはそう変わらないのです。そのため脳出血を予防するためには本数を減らすのではなく、完全に禁煙しなければいけません。
しかし本数を減らすことに意味がない、というわけではありません。一日に煙草をひと箱吸っていた人がいきなり禁煙するのは難しい場合があります。そういう場合には少しずつ本数を減らしていき、徐々にゼロへと近づけていくという方法も有効です。