脳出血とはどのような病気か
脳内の血管に何かトラブルが起き、それが基で様々な症状が引き起こるのが脳卒中ですが、脳出血はその脳卒中のタイプの1つです。脳卒中の1つである脳梗塞が動脈硬化や血栓によって血管が詰まることを原因とするのに対して脳出血は血管が破れてそこから脳内に出血し、脳細胞がその血液の塊に圧迫されることで発症します。症状としては激しい頭痛、手足の麻痺、言葉の障害、意識がなくなる、などが見られます。中にはしばらくすると治まるものから後遺症として一生残るものもあり、最悪の場合は命の危険につながります。
脳出血の原因「高血圧」とは何か
原因:高血圧などを原因で、動脈壁が破れる
脳出血が発症するメカニズムとしては血流によって血管が破れ、そこから流れ出た血の塊が脳細胞を圧迫することです。それではなぜ血管が破れるかというと、その原因の多くは「高血圧」となります。
私たち人間が正常に活動するためには酸素が必要で、その酸素を身体中に供給してくれるのが血液です。血液によって酸素は身体中に行き渡るのです。そしてその血液を全身に送るポンプの役割を果たしているのが「心臓」です。心臓が停止すると生命活動も停止する=死に至るのはそのためです。液体をポンプで送り込むときに必要となるのが「圧力」で、心臓においては血管を通じて血液を全身に送り込むわけですが血液にかける圧力のことを「血圧」といいます。この血圧が正常であるならば問題がありません。血液はスムーズに血管の中を循環します。しかし何らかの理由でこの血圧が高まることで、血管にトラブルをもたらしてしまうのです。
一般家庭にある青色のホースを想像してみてください。あのホースを通常の蛇口につなげても問題なく水は流れるでしょう。しかしあのホースを例えば消防車につなげてみたらどうなるでしょう? 消防車は火を消すために強力な圧力をかけて水を放射します。その水圧で一般家庭にあるホースに水を通したらあまりの水圧にホースは傷つき、破れる箇所が出てくるはずです。
高血圧による脳出血は言わばこのような仕組みで起こります。圧力が高ければ液体をしっかりと送ることができますが、それ以上にマイナスな状況をもたらします。とくに血管は脆く、繊細です。高血圧によって血管は傷つき、脳出血のリスクを高めてしまうのです。
脳出血の症状
脳出血は脳内の血管が破れてそこから出血し、血の塊が脳細胞を圧迫することで発症します。症状は様々ですが、それは発生部位や出血量の影響を受けて変化します。
視床出血
「視床」とは間脳(大脳半球と中脳の間)の左右に1対ずつある部位で、様々な感覚(触覚や痛覚)を司っています。脳出血のおそよ3割はこの視床出血です。視床出血が起こると、物に触れても何も感じなくなる感覚障害や、半身を激しい痛みが襲うことがあります。また眼球が常に下の内側を向いてしまうという症状が出ることもあります。
被殻出血
「被殻」は部位としては大脳の中央部に左右1対ずつ位置し、肉体の運動における様々な調節や筋緊張、他には記憶や学習などを司っています。脳出血の4割から5割がこの「被殻出血」で、割合としては最も多いと言われています。症状としては片側の麻痺や激しい頭痛、物に触れても何も感じなくなる感覚障害、言葉を選べなくなったり相手の言葉を理解できなくなったりする失語症・構音障害が出ます。
小脳出血
脳幹の後方に位置するのが「小脳」で、運動機能と知覚を統合し、筋緊張や平衡感覚を調整する機能を司っています。脳出血全体のおよそ1割がこの部位からの出血です。症状としては、眩暈や突然の頭痛、立ち上がることや歩行が困難となる運動障害が見られます。また出血によってできる血腫のサイズが大きいと脳幹を強く圧迫し、命の危険につながることもあります。
脳幹出血
「脳幹」とは中枢神経系を構成する重要な役割を担った部位です。中脳と延髄によって上下を挟まれていて、呼吸や血液の循環、食べ物の嚥下という生命維持にとって大切な活動を司っています。脳出血全体のおよそ1割がこの部位からの出血です。脳幹は生命を維持する機能を司っているため、この部位からの出血は重症化しやすい傾向にあります。四肢の麻痺や意識障害、「縮瞳」という瞳孔が小さくなる症状、あるいは昏睡状態という命の危険につながる事態を招きます。
皮質下出血
大脳皮質は大脳半球を覆っている層ですが、その下で出血が起こることを「皮質下出血」といいます。脳出血全体のおそよ1割から2割を占めています。大脳皮質の中でも前頭葉、頭頂葉、側頭葉という部位からの出血が多く、片麻痺や顔・手足の痙攣、言葉を選べなくなったり相手の言葉を理解できなくなったりする失語症・構音障害、視野の半分が欠損するといった症状が出ます。
発症するとこのような症状が出ます
片方の手足や顔半分の麻痺やしびれ
顔面なら出血した部位が、手足ならその反対側に痺れや麻痺が出ます。
ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の話を理解できない
言葉を口に出そうとしても舌がうまく動かせず、意図したいことを相手に伝えられません。
他に伝えたいことははっきりとしているのにそのための言葉を選ぶことができなかったり、相手の言葉が音としては聞こえているのにその内容が理解できなくなったりします。
立てない、歩けない、ふらふらする
出血した部位によっては運動機能に障害が出ます。立ち上がることができなくなる、まっすぐ歩けなくなる、歩くことすらできなくなる……というように日常生活に大きく支障を来たします。
見え方がおかしくなる、2 つに見える、視野が欠ける
片方の視界が欠損する、物が二重に見えるなど視覚に悪影響が出ることがあります。
激しい頭痛
脳出血の代表的な症状の1つです。激しい頭痛に突如として襲われます。
意識が悪くなる
眩暈や吐き気に襲われます。ときとして歩けなくなり、その場に座り込んでしまいます。
発症したらFAST
『ACT FAST』とは欧米で取り組まれている脳出血(脳卒中)に対して正しい知識を持ってもらい、適切に予防するためのキャンペーンです。脳卒中の可能性がある人に対して、以下の3つのテストを実施することでその発症を早期に見つけ、適切な治療をすることを目指します。
『Face』 フェイス・顔
異常の有無を顔で判断します。「イー」の形に口を広げます。
脳卒中を発症している人は顔面の麻痺を生じていることがあり、口の片側を上げられないことがあります。
『Arm』 アーム・腕
異常の有無を腕で判断します。バンザイをするように両腕を上げます。
脳卒中を発症している人は四肢の麻痺を生じていることがあり、片腕が上がらないことがあります。
『Speech』 スピーチ・言葉
以上の有無を言葉・舌の動きで判断します。『今日の天気は晴れです』などシンプルな文章を言葉として声に出します。
脳卒中を発症している人は舌の動きが不自由になっていることがあり、ろれつが回らないことがあります。
『Time』 タイム・時間
F・A・Sのうちどれか一つでも該当する――異常があれば、脳卒中を発症している疑いがあります。その場合は速やかに病院を訪れ、診察・治療を受けるようにしてください。