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くも膜下出血の原因

目次

くも膜下出血とは? 非常に高い死亡率

人間の脳は外側から内側に向けて「硬膜」、「くも膜」、「軟膜」という順番で膜に覆われて保護されています。くも膜と軟膜のあいだにある空間を「くも膜下腔」といいますが、脳内の血管が出血を起こしてこのくも膜下腔に血が流れ込んだ状態が「くも膜下出血」です。

くも膜下出血が起こる原因の大半は、脳動脈(脳内の血管)の一部が膨らむことで出来る動脈瘤の破裂です。一般的に男性よりも女性の方が発症率が高く、年齢的には40歳以降から危険性が徐々に高まっていきます。家族の中に動脈瘤・くも膜下出血を発症したことがある人がいると先天的に発症率は上がるともいわれています。

また外傷によって引き起こされることがあります。ボクシングやラグビーなどの試合で頭部に激しいダメージを受けた場合などにも注意が必要です。他に自転車から転倒してコンクリートの地面に頭をぶつけても発症することがあります。

くも膜下出血は脳梗塞、脳出血とともに脳卒中の一種ですが、大きな特徴として死亡率の高さを挙げることができます。動脈瘤が破裂すると重症化することが多く、発症した患者の大半(50%)が間もなく死亡し、死亡を免れても深い昏睡状態に陥ります。また迅速に病院に搬送されて医師による処置を受けることができても、発症前と同じように社会活動を行えるようになるのはさらに半分(全体の25%)に満たないというデータもあります。くも膜下出血は発症自体に非常な危険を伴うため、発症前に動脈瘤を発見して処置することが基本的な対処となっています。

くも膜下出血の前兆

脳内にある動脈瘤の破裂によってくも膜下出血は引き起こされます。この動脈瘤の破裂は前兆なくいきなり発生することがほとんどです。同じ脳卒中に分類される脳梗塞は顔面の引きつり、手足の痺れ、ろれつが回らないといったわかりやすい前兆がありますが、くも膜下出血の大半は突然発症します。

しかし中には脳内の動脈瘤が本格的に破裂する前に少しだけ破れ、そこから少量の出血をしたり、それによってできた血腫が神経を圧迫したりして、頭痛が生じることがあります。この頭痛を「警告頭痛」といい、このときにすぐ病院に行って医師の診察を受けることができれば重症化せずに治療することも可能です。しかしほとんどの方が単なる頭痛だと思って見過ごしてしまっているのが現状です。

またくも膜下出血の前兆として、血圧の変化を挙げることができます。くも膜下出血を発症した人の中には、破裂の数日前から血圧が上がったり下がったりして動悸や眩暈を覚えたという例が一定数見られます。

激しい頭痛

出血によってできた血腫が脳細胞を圧迫することで頭痛が生じます。ときに耐えがたい痛みが出ることもあります。

首の後ろの違和感

後頭部あたりが重たくなります。「頭が引っ張られたような感覚」とも表現されます。

意識障害

眩暈がして視界が揺らぐような感覚が生じます。立つことも困難になり、その場に座り込むこともあります。

嘔吐

気分が悪くなり、嘔吐します。

くも膜下出血を発症したときの対処法

くも膜下出血を実際に発症したらどのような対処をすればいいでしょうか?

前兆あるいは発症のサインとして最も顕著なのは頭痛です。これまでに経験したことがないような激しい頭痛に襲われたら、躊躇することなく119番をして救急車を呼ぶようにしましょう。意識障害が生じて意識を失いそうになったら、家族など周囲の人間に助けを求めてください。ここで大切なのは「もしも勘違いだったら……」や「大事にはしたくない……」と思って119番にしろ周囲の人間にしろ助けを呼ぶのを躊躇することです。くも膜下出血は発症自体が非常に危険のある疾病で、そのため治療は何より緊急を要します。その状態を放置していると後遺症の重症化、あるいは命を落とす危険性を飛躍的に高めてしまいかねません。

また前兆となる頭痛や意識障害が軽いものであっても、それが続くことで大きな発作につながることがあります。頭の中に何かしらの異変を感じたらすぐに医師の診察を受けるようにしましょう。

くも膜下出血の原因となるリスク要因

くも膜下出血は脳内の動脈瘤が破裂することによって発症しますが、その発症の可能性を高める危険因子があることがわかっています。

一般的には以下の要因を挙げることができます。

高血圧

くも膜下出血が発症するリスクを高める危険因子としてもっとも注意しなければいけないのが「高血圧」です。高血圧を発症している人は、そうでない人と比べてくも膜下出血の死亡リスクが3倍ほど高くなるというデータがあります。高血圧になると血管に負荷がかかるようになりますが、動脈瘤に対しても高い圧力が常に加えられるようになります。そのため破裂の危険性を高めてしまうのです。

高血圧になる主な理由に塩分の摂り過ぎを挙げることができます。実際にくも膜下出血を発症した人の食生活を調べてみると塩分の多い食事を好む傾向にあることがわかっています。塩分を摂り過ぎている人がくも膜下出血を発症するリスクは、そうでない人に比べておよそ3倍にもなるといわれています。

喫煙

高血圧と並んでくも膜下出血を発症する危険因子と目されているのが喫煙習慣です。煙草に含まれるニコチンが動脈瘤を破裂させる可能性を高めます。また喫煙は高血圧にもつながるというデータもあります。

喫煙の本数はあまり関係がなく、1日に20本吸う人も5本吸う人でも発症リスクにほとんど差はないのです。そのため喫煙者がくも膜下出血の発症リスクを抑えるためには完全に禁煙する必要があります。

家族の病歴

親・祖父母・兄弟など血のつながりのある家族に脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)を発症したことがある人がいる場合は、本人も体質的に発症するリスクが高まります。

輸血歴

どのような関連性があるかは詳しくわかっていませんが、輸血歴がある人はくも膜下出血を発症するリスクが高くなります。とくに男性の場合は輸血歴がない人に比べて発症リスクは4倍近くも高くなるというデータもあるため注意が必要です。

飲酒

アルコールは適量なら血行を良くする効果もありますが、過度な摂取は高血圧へとつながることがわかっています。また多くの場合、飲酒はアルコール単体を摂取するのではなく塩分の多い食事も一緒に口にしてしまいます。

その他のリスク

過度なストレスや疲労、寝不足は血管が傷つきやすくなり、くも膜下出血を発症するリスクが高まることがわかっています。

前兆を見逃さないことが大切

くも膜下出血は脳卒中の中でもとくに重症化しやすく、命に危険につながりかねない重篤な疾病です。そのため発症したらすぐに適切な治療を受けることが重要となります。その機会を逃したら重い後遺症が残ったり、昏睡状態が続いたり、最悪の場合は命を落としかねません。予防法や対策を知るとともに、少しでも疑いのある症状が出たらすぐに病院で診察・治療を受けるようにしましょう。

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