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脳梗塞に対する脳の免疫細胞「ミクログリア」の攻撃性を安全に善玉化する方法を発見

目次

ミクログリアは脳がダメージを受けると、まず悪くなった細胞を排除してお掃除をします。この時に、潔癖症のため本来は回復能力が残っている細胞まで掃除してしまうので、機能障害が拡大(攻撃性)してしまいます。掃除が終わると今度はきれいになった部屋がより悪くならないように(細胞のダメージが広がらないように)強力に保護してくれます(善玉化)。掃除をしているときのミクログリアを「M1ミクログリア」と呼び、保護しているときのミクログリアを「M2ミクログリア」と呼びます。

新潟大学脳研究所神経内科下畑准教授、金澤助教らの研究グループは、このM2ミクログリアの強力な脳保護作用に着目し、早期にM2ミクログリアを投与できれば機能障害を軽減できると考え、M1ミクログリアがM2ミクログリアに変化する要因を研究しました。その結果、ミクログリアを脳梗塞に類似した環境、すなわち酸素とブドウ糖の濃度が低下した状況に短時間曝露させるという簡単な刺激により、脳保護的なM2ミクログリアに変化できることを初めて発見しました。脳梗塞を発症後、すでに1週間を経過したラットに、その細胞を投与すると、血管のバリアを越えて脳内に入り込み、成長因子やいくつかの脳保護蛋白を脳梗塞の病変周囲で増加させることを明らかにしました。さらには、脳梗塞病変における新しい血管の再生、および神経細胞の再生が促進され、その結果、脳梗塞後遺症である運動感覚障害の回復が促進されることを(図2)、世界で初めて明らかにしました。

現在研究されているiPS細胞や幹細胞を用いた細胞療法と比べ、発症早期からの治療ができる点、がん化のリスクがない点で、より有効で安全な臨床応用の可能性が期待されます。

ミクログリア・対象細胞・無治療の改善効果のグラフ

論文タイトル:Microglia preconditioned by oxygen-glucose deprivation promote functional recovery in ischemic rats

著者:Masato Kanazawa,1 Minami Miura,1 Masafumi Toriyabe,1 Misaki Koyama,1 Masahiro Hatakeyama,1 Masanori Ishikawa,1 Takashi Nakajima,2 Osamu Onodera,1 Tetsuya Takahashi,1 Masatoyo Nishizawa,1 and Takayoshi Shimohata,1

1.Department of Neurology, Brain Research Institute, Niigata University, 1-757 Asahimachi-dori, Chuoku, Niigata, Niigata, Japan

2. 2Department of Neurology, Niigata National Hospital, National  Hospital Organization, 3-52 Akasaka-cho, Kashiwazaki, Niigata, Japan

Scientific Reports 誌

https://www.niigata-u.ac.jp/wp-content/uploads/2017/02/290215.pdf

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