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脳卒中の後遺症

目次

脳卒中の後遺症

脳卒中と聞くと多くの人が「後遺症」や「リハビリ」という言葉を思い浮かべるかもしれません。たしかに脳卒中は様々な後遺症が残る可能性がある症状として知られています。

ここでは実際にどのような後遺症があるかを紹介します。

麻痺

脳卒中になると大脳の運動野や錐体路の神経線維がダメージを受けることがありますが、それによって身体に麻痺が生じることがあります。このとき大脳の右側にダメージを受けたなら延髄(後頭部と首の境目)から上においては右側に麻痺が、延髄から下の手足などには左側に麻痺が出ます。これは延髄の部分で運動神経が交差しているためです。また運動神経のすぐ近くには感覚神経も走っており、麻痺が生じたなら痺れ・感覚鈍麻なども伴う可能性があります。感覚神経の障害は身体全体のバランスが取りづらくなり、その場合は重い後遺症となってしまいます。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは「物事を記憶することができない」、「集中して考えることができない」、「注意を向けることができない」「間違いがあってもそれに気づくことができない」「学習することができない」など、大脳がダメージを受けたことで高いレベルの脳の機能・処理ができなくなってしまうことをいいます。脳卒中はこの高次脳機能障害が残る可能性もあります。一例として、高次脳機能障害の患者は浴室で身体を洗ったあとに泡を流すことなく出てくることがあります。

見当識障害

「ここがどこなのか(場所)」「今がいつなのか(時間)」がわからなくなる状態を見当識障害といいますが、これも脳卒中の後遺症の一つです。自分の状況を把握できなくなるため大きな不安や混乱に襲われるといわれています。とくに入院や治療のための転居などで環境が大きく変わったときに強く現れる傾向にあります。

意識障害

大脳や脳幹が広範囲にわたってダメージを負ったときに起こる症状です。意識障害になった患者は会話や思考が混乱したり、眠りがちになったり、集中力を欠いたりします。重度の場合は昏睡状態に陥ることもありますが、このとき呼吸・免疫系・消化管・循環なども状態が悪化することで命に関わる事態が起こることもあります。

言語障害

言語障害は脳卒中の後遺症の代表例です。左前頭葉や側頭葉がダメージを受けると言葉がうまく出てこなくなったり言葉自体を理解できなくなったりする失語症が生じます。脳幹がダメージを受けると呂律が回らなくなる構音障害が出ることがあります。

嚥下障害

大脳が広範囲にダメージを受けたり、脳幹が損傷したりすると物がうまく飲み込めなくなる嚥下障害が起こります。嚥下障害になると栄養をうまく摂取できなくなり、一気に身体が弱まってしまうので適切なケアが必要となります。

呼吸障害

自発呼吸がしづらくなる障害で、適切なケアをしなければ命に関わることもあります。

精神障害

大脳基底核や側頭葉・後頭葉などにダメージを受けると精神障害が出ることがあります。精神障害には鬱や怒りっぽくなる、せん妄(混乱)など様々な種類がありますが、どれも周囲とのコミュニケーションに支障を来たすおそれのあるものだということができます。そのため周囲の理解やサポートが重要となってきます。

遂行機能障害

計画性や効率性という概念が欠如し、先を見通して計画的に物事を進めることができなくなります。

半側空間無視

左右どちらか片側の物事を認識できなくなります。食事のときに自分の左右片側にあるものを残したり、歩行時にやはり左右片側のものにぶつかったりします。

再発予防のためのアプローチ

脳卒中は再発しやすい疾病として知られています。年間再発率は5%で、これは脳卒中になってから一年間のうちに20人中1人の割合で再発することを意味しています。またあるデータによると10年間で50%――なんと半数の人が再発したともいわれています。

これはむし歯や歯周病と同じで、脳卒中になる人は脳卒中を起こしやすい体質や生活習慣を持っていて、その状態を放置することで再発を許してしまうのです。しかも脳卒中は再発すると元々の後遺症が重症化したり、新たな後遺症が加わったりするおそれがあるため、再発を防ぐことは何より重要だということができます。

脳卒中を起こしやすい体質や生活習慣があるということは、それを改善することで脳卒中を起こしにくくすることもできるということです。以下のことに注意・対処して脳卒中の再発を防ぐよう心がけましょう。

原因となった疾病の治療

脳卒中になった人の多くが高血圧、脂質異常症、糖尿病などの疾病を抱えていて、そのことが原因で脳卒中を発症しています。これらの疾病を治療・改善することで再発を防げる可能性が高まります。

高血圧

高血圧は血管に大きな負荷をかけるため、脳卒中を引き起こす最大の危険因子だといわれています。そのため血圧をコントロールすることはとても大切です。数字の目標としては上の血圧が140mmhg未満、下の血圧が90mmhg未満となります。食事においては塩分を控えめにし、適度な運動を心がけるようにしましょう。数字がこれよりも高い場合は、医師と相談のうえで内服薬による降圧治療を行います。

脂質異常症

コレステロールや中性脂肪が高い状態を脂質異常症といいますがこの状態は動脈硬化が進みやすくなり、脳卒中を引き起こしやすくなります。食事療法や適度な運動によって改善が望めますが、それでも効果が出ない場合には内服による薬物療法を行います。

糖尿病

糖尿病は動脈硬化を起こし、また進行させるはたらきがあるため、高血圧と並んで脳卒中を引き起こす危険因子に挙げられます。血糖値のコントロールには食事療法や適度な運動が効果的ですが、それでも正常値にならないなら薬物療法を行う必要があります。薬物療法は大別すると内服によるものと、インスリン注射の2種類があります。

生活習慣の改善

脳卒中の再発を防ぐためには生活習慣の改善が不可欠です。

バランスの取れた食事

塩分や脂質を抑え、タンパク質やミネラルなどのバランスを考えた食事をよく噛んで摂取することが大切です。

水分を充分に摂取する

水分が不足すると血液濃度が高まって動脈硬化などを引き起こし、脳卒中のリスクが高まります。それを防ぐためにもこまめに水分を摂取する習慣を身につけましょう。

運動習慣

運動の習慣がある人はそうでない人に比べて脳卒中になる割合が低いというデータがあります。運動は肉体の健康にとって多くのプラス効果をもたらします。カロリーを消費することで体重をコントロールできるようになり、そのため高血圧などの症状も起こりにくくなります。気分をリフレッシュさせる効果もあり、それによって仕事などで溜め込んだストレスを解消させることもできます。

すでに何らかの持病があって運動に制限がかかっているという人は、担当の医師やスタッフと相談をしてできる範囲のことから始めていきましょう。

禁煙や飲酒の制限

喫煙と飲酒はどちらも脳卒中のリスクを高めることで知られています。

規則正しい生活

充分な睡眠量を確保することやストレスを溜めないことも大切です。寝不足やストレスは血管を傷つける原因となります。

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